2007/11/30 [01:44] (Fri)
何度目かの遺跡外。
外の空気は出る度に寒く冷たくなっていた。
吐く息は微かに白く、澄み切った空と日差しだけが
本格的な冬の到来に抵抗しているようだった。
寒さに震えながら足早に宿へ向かう探索者を尻目に
灰の男は人気のない場所を選んで歩みを進めていく。
「そろそろか…」
呟くと、街道脇の森林へと入って行く。
日の光が届かない奥所にたどり着くと
荷物を降ろし、一息ついた。
「やっかいな体質だな。」
ため息混じりの言葉を吐きながら
周囲の気配を注意深く窺う。
やがて誰もいないことを確認すると
おもむろに衣服を脱ぎ始める。
襟巻と装束、篭手布や脛当などを丁寧に荷物の脇に並べ
そこから少し離れたところに立つ。
「何事も無く済めば良いがな」
はずれない仮面や篭手を気にしながら、静かに佇む。
数分後、男の体に火が着き激しく燃え上がる。
赤く燃え盛る炎は全身を包み込み、男の形を崩す。
そして、完全に姿形を壊しきると役目を終えたかのように燃え尽き
後には灰とみられる固体と篭手のみが残った。
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